ペンギンさんの日
ずっとずっと昔の話である。認知症(当時は単に老人ボケと言っていたが)で死んだじいさんが、まだ元気な頭だった頃であるから、小学校の頃の話ではないだろうか。 私の実家は船上城の近くだった。その頃、明石の海岸沿いの市役所があったあたりに、小さい水族館があった。歩いて行ける距離だった。
1972年に閉館となっているから、行ったのはその前後であろう。いかんいかん、後ではない。つぶれた後に行っても何もいない。ましてや逃げ出したペンギンの話でもない。
とにかく、ほとんど客がいなかったことを覚えている。須磨水族館(現須磨海浜水族園)や姫路水族館にやられちゃったんだ。
さて、話は元に戻って、小学校の何年生かの頃に、じいさんに連れられて明石水族館に行ったのである。多分、私が
「どこかに遊びに行きたい」
とでも言ったので、手近なところで明石水族館にしたのだろう。
不思議とじいさんは私を可愛がってくれた。父母はそうでもなかった。私は父親に抱いてもらった記憶はない。その分じいさんが認知症になったとき、介護をさせられたのであるが・・・・。
ペンギンは明石水族館のウリであったが、何しろつぶれる前なので誰もいなかった。
私はどうも檻の隙間からペンギンをいじっていたらしい。子供の指が通るような檻も危ないと思うが、そこに指を突っ込むのもどうかと思う。
じいさんはどうも見ていなかったのだろう。ペンギンが私の指を突いたのである。その後どうなったのか覚えていないが、多分、泣いて帰ったのじゃないかなと思う。
ペンギンの飼育係以外でペンギンにつつかれたのは、そんなにいないだろう。別に自慢するようなことでもないが........。
じいさんには可愛がってもらったが、私が高校生の時に「老人ボケ」になった。当時は認知症という言葉はなかった。痴呆症もあったかどうかあやしい。認知症を取り扱った映画がヒットして、「恍惚の人」と呼ばれていた。現在も認知症を治す薬はないが、進行を遅らせる薬はある。
一番よく使われているのは、アリセプト(Aricept)5mgである。アルツハイマー型認知症及びレビー小体型認知症の認知症症状の進行を抑制し、症状の発現を遅らせることができる。